2012年4月21日土曜日

アフリカは"かわいそう"なのか? 「アフリカ 苦悩する大陸」: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる


 「なぜ、アフリカは貧しいのか?」あるいは、「どうすれば、アフリカは貧困から脱出できるのか?」に具体的に応える一冊。

 内戦・旱魃・伝染病、アフリカの貧困を訴える慈善団体は、その理由に事欠かない。死に瀕している幼児の映像は本物だが、莫大な募金や政府開発援助がそこまでたどり着かないことも事実。

 最貧困層のためにあるはずの援助の実態は違っており、「援助とは富裕国の貧困層から、貧困国の富裕層への富の移転にすぎない」という皮肉は、残念ながらあたっているという。ではどこへ?


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わかりやすく言えば、高級ホテルで行う会議や、議員先生たちのワシントンへの出張旅費、それに外国人の援助スタッフを連れまわすためのランドクルーザーの購入費に、援助資金の多くが費やされているのである。
 ニューヨーク支所の高額なテナント料を払うために、栄養失調幼児をプロパガンダする「慈善団体」があることは知っていたが、腐敗した国の権力者も同様のようだ。キレイ事をいう実力者たちの思惑をよそに、大いなる欺瞞が明かされている。

 「なぜ、アフリカは貧しいままなのか?」の理由に教科書どおりに答えるならば、植民地時代からの搾取、不安定な政府、内戦や伝染病、人種差別、部族主義や呪術主義、インフラや教育の欠如からHIV/AIDSの跋扈――と枚挙に暇がない。

 著者はこの質問に明快に答える。すなわち、政府が無能で腐敗しているからだという。私腹を肥やす権力者、国民から強奪する警察官、堂々とわいろを要求する官僚――これら腐りきった連中がアフリカを食い物にし、援助や支援が吸い取られる。資源に恵まれた国であっても同様だ。奪い合い→内戦化→国土の荒廃を招くか、あるいは、外資が採掘場所を徹底的に押さえ、オイルダラーが国民まで行き渡らない構造になっているという。


世界の貧困とは何か

 ただし、「アフリカ」と丸めて言ってしまったら誤りだ。うまくいっている国もあれば、失敗国家もあるのだから。著者もよく理解しており、「海外からの援助はボツワナを貧困から救い出し、ザンビアでは浪費された。この違いはなんだろうか?」 と自問する。猖獗をきわめるエイズ禍を食い止めたウガンダの場合と、手遅れとなりつつある南アフリカの事例を比較する。

 この比較論が興味深いのだが、その違いも全て、「為政者に恵まれていたか否か」によるという。腐敗した政治家が国家を疲弊させているいっぽうで、貧困から脱出した国は、堅実な財政と誠実な為政者、自由経済に恵まれていたのだと。

 この一刀両断っぷりに疑問を感じる。

 もちろん、この著者はジャーナリストとして7年間にわたりアフリカ各地で取材活動を行っている専門家で、「エコノミスト」のアフリカ担当編集長だ。実際に話を聞いたところからくる生々しさは、本書の醍醐味だろう。見殺しにされたルワンダの虐殺や、無造作にAKを扱う子ども兵など、個々の例は事実だろう。そして、援助を横領し、天然資源を独り占めする大統領がいる国の先行きは、非常に暗いものになるだろう。


倹約ニッケルアイダホフォールズアイダホ州

 しかし、そんな為政者がいつまでも権力の座にいるのだろうか? っつーか、クリーンな為政者って鐘や太鼓で探してもいないんじゃないの? と思えてくる。無能な政府は隠れ蓑として白人による搾取を強調するが、たとえそれが誇張しすぎだとしても、あまりに低く評価しすぎいないか、と思えてくる。

 たとえば、内戦を描写する際、迫撃砲や武装ヘリで交戦した旨が記されているが、アフリカではトマホークやアパッチは生産していない。もちろん「輸入」しているはずなのだが、そこに介在するはずの武器商人や企業マフィア、戦争請負会社の存在が全く記述されていない。内戦を合法的に食い物にしている企業に触れないところを見ると、知らないはずはないのに…と勘ぐりたくなる。

 おそらく、「アフリカ」とひとくくりで語ろうとするには無理があるのだろう。「コンゴ・ジャーニー」とか「アフリカの日々」でしか知らないわたしには、本書は荷が重すぎるのかもしれない。ただ、キレイに「これが全ての原因だ」と断言されると、疑いたくなるもの。ラストの「被害者意識を脱ぎ捨てる」あたりに、著者のホンネ(?)のようなものが垣間見える。


アフリカでは、過去および現在の問題はほとんどどれも外国人のせいだと決め付けていることが多く、おかげで一種独特な無力感にとりつかれている。実際、外国人を責めるべき問題も確かにある。アフリカの人びとは植民地時代に辛酸をなめさせられた。だから当時の仕打ちに怨みを抱くのも当然だろう。しかし世界のほかの地域でも、歴史的な怨みを抱きつづけているが、必ずしも国の成長を阻んではいない。

外国人相手に不満をぶちまければ、気分はすっきりするかもしれないが、それ以外の効果はあまり期待できない。白人どもを猛然と糾弾するのが得意だからといって、その政治家が予算を均衡させ、下水道を整備できるとは限らない。むしろ逆の場合が多い――ダメな支配者たちは往々にして国粋主義を隠れ蓑にして、みず からの失敗から国民の目を逸らそうとするものなのだ。


 おそらく事実の一面だろうが、実際に貧困にあえいでいる人からは、反論必至だろう。あたりまえなのだが「先進国の白人の視線」がそこここにあり、いちいち引っかかる。貧困から脱出するため、「不動産の共有制から私有制への変革」や「完全自由貿易の推進」といった、わかりやすい処方箋が罠のように見えるのは、わたしの勉強不足によるからだろうか。そのうち山形浩生さんが中央公論あたりでバッサリとレビューするだろう。

 ワクワクテカテカしつつ待っていよう。



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